もう一度、結婚したい。
わたしが切実にそう思ったのは、下の息子がちょうど中学生になったときのことでした。上の娘は保育科のある短大に入学し、自分で奨学金の手続きも全部すませて「保母さんになる」そう言ってすっかり大人びた様子でバイトと学校に明け暮れていました。でも息子のほうは小学校6年生になってもけっこうなママっ子だったんです。
その子が中学校に入ったとたん、すっかり変わった。
部活に忙しくなって、わたしがあれこれ問いかけても口数も極端に減った。
思春期なのね、とわかっていたつもりですが、でもやっぱりさみしかったですね。
それまで子育てと仕事で一日が24時間では足りない思いだったのに、ふと気付いたらわたしは夕飯を片づけたらぼんやりとソファに座って、見たくもないテレビをながめているだけ。
こうして年をとっていくの?
しっかり者の娘と、やがては母を卒業して好きな女性と家庭を築くであろう息子に、「母子家庭だから、お母さんが必死にわたちたちを育ててくれたから」と感謝(と、たぶん同情も)されながら、わたしは子どもたちのお荷物にならない人生を模索しながら、ひとりで老いていくのだろうか。そう思ったら、愕然としてしまいました。
そんなときです。
勤めている地元の小さな工務店の社長の奥さんに言われたんですよね。
(この奥さん、いつでも頼りになる相談相手なんですけど。)
「ちかちゃんね」
あんたは子どものため、子どものためと言ってやってきたけど、それが子どもの重圧になっちゃぁ本末転倒なんだよ、って。
あんたの人生は結局、あんたのものなんだから。子どものものじゃないし、子どものためのものでもないって。
「婚活って言うんだってさ」
奥さんが言ったんですよ。
「就職活動と一緒らしいよ。結婚相手を探すってことだね。あんたもさ、そろそろ再婚とか考えてみてもいいんじゃない。そこまでいかなくても、恋人とか作ったら」
さばけた奥さんでしょ(笑)
笑い飛ばしたわたしだったけど、だんだんと本当にそう思うようになっていました。
もう一度、結婚したい。バツイチで子持ちだって、もう一度、あらためて結婚生活やり直すチャンスがあったっていいかもしれないって。
結婚生活に失敗して、苦労して子どもを育ててきたわたしが、どうしてまた「結婚」にこだわるのか。答えが見つからないまま、わたしの胸のなかに「婚活」という言葉だけがふくらんでいったのでした。