工務店の奥さん、私にとっては頼りになるお姉さんのような、肝っ玉母さんとも言うべき人です。「なんでそう、自分の過去にこだわるのかね」いつになく真面目な顔で問いつめられて私はうなだれてしまいました。
「結婚に失敗した、だから離婚した。それだけのことじゃないか。相手の人もそれがわかっていてあんたと会ってるんだし、大事なのはこれからのことなのに」わかっているんです。Kさんもバツイチ限定パーティーで出会ったわけですから理解してくれているのもでも、頭では理解しているのです。でも、Kさんとその母親に私の過去をどう思われるかっていうのはものすごく大きなことなんです。
「あんたは相手の人に対しても、それから自分自身についても、なんでも条件で考えるんだね」「条件をクリアーすることが婚活なのかい? ばっかばかしい」ぷい、と不機嫌な顔で言い放って横を向いた奥さん……。そんなつもりはありませんでした。条件をつけたのは失敗したくないからだし、私の条件が悪いことが相手の不安や不満にならないかと心配しているだけではありませんか。
「あんたに子どもがいるってことも、あんたの悪い条件なわけ?立派に育ててきた子どもじゃないか。自慢の子どもなのになんでそれが悪条件なんだい」黙り込んでる私をおいて、奥さん、ぱっと立ち上がって喫茶店を出ていってしまったんですけどね。カウンターごしに馴染みの喫茶店のマスターが私におかわりのコーヒーを入れてくれました。
「奥さんはちかちゃんのことが心配なんだよ。自分の娘みたいに思ってるんだからさ」ふいになんだか泣けてきました。なんだか、私、自分のことも相手のことも「相関図」みたいに図表を作って考えていたんです。そしてバツイチなことや、子持ちなことをマイナス条件として書き込み、相手の母親の存在をマイナス条件として書き込み、その表をじぃっと眺めて考えていたんです。
ここがプラスポイント1、ここがプラスポイント3、でもマイナスポイントが2……。図と数字にして、相手と自分の関係をプラスマイナスゼロにしようとやっきになっていたのかもしれません。でも、人と人との関係が数字であらわせるわけがないのに。